アメリカ科学業界の人種問題対策、実況と雑感

人種問題に揺れ動くアメリカ。学術業界は、どう立ち向かう?

アメリカの中学参考書でアメリカの歴史を学ぶ

BLM(black lives matter)運動の背景を理解するためにもっとアメリカの歴史を知りたいと思っていたところ、この本を見つけました。

この本はアメリカの中学生向けに書かれた参考書です。少し前に子ども用に購入してホコリをかぶっていたのですが、アメリカの歴史をざっと知るのにぴったりな内容だということに気づき、読んでみました。クラスでいちばん頭のいい子から借りてきたノートという設定で書かれていて、イラストが豊富で文章もわかりやすく、歴史の勉強が苦手なわたしでもスイスイ読めました。英語の学習にも役立つ本だと思います。

 

読んでみて、アフリカから奴隷として連れてこられた人たちが、いかにアメリカ合衆国の成り立ちに関わってきたのかよくわかった気がします。アメリカ合衆国が国として独立する以前の1700年代、アメリカ南部では何世代にもわたるプランテーションでの奴隷労働のおかげで、一部の人たちが豊かになりました。一方アメリカ北部では、奴隷を使った大規模農業は行われておらず、貿易や工業により経済が成り立っていました。奴隷制支持の南部と不支持の北部。この対立構造が1800年代中頃に南北戦争を引き起こし、リンカーンによる奴隷解放宣言につながりました。しかし、奴隷という身分がなくなってから、黒人が公民権を獲得するにはさらに100年ほどの年月が必要でした。現在においても、警察による暴力、所得・教育格差など、アメリカの黒人は不利な立場に追いやられたままです。

 

本の序盤に、アメリカにおける奴隷制という章があり、そこに人種主義と奴隷制の関係についての記述がありました。人種の間に優劣があるという人種主義の考え方は、奴隷の所有者が黒人奴隷制を維持・正当化するのに都合がよかった。そのため、人種主義と奴隷制は互いを強化する形で広まっていったという指摘です。当時の倫理観においても奴隷制を正当化することは難しかったため、人種主義という思想の助けが必要だったのだと考えられます。 

 

アメリカの歴史を概観してみて感じたのは、大統領のリーダーシップのもと、数十年単位で国の様相が大きく変化してきたということ。多様な文化や考え方を持った人たちがせめぎ合い、政治・経済・生活、どれもが目まぐるしく変化する。意見が対立した状態でも、いいと信じた方向に世界を変えていく。そういった信念が、アメリカを形作っているように思います。