アメリカ科学業界の人種問題対策、実況と雑感

人種問題に揺れ動くアメリカ。学術業界は、どう立ち向かう?

黒人人種差別の根絶に向けた米国アカデミアのストライキ(前編)

2020年5月25日、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリスアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが、白人の警察官に拘束され、首を押さえつけられて死亡しました。この事件をきっかけに、全米および世界各地で、黒人に対する暴力と構造的な人種差別の根絶を求めた抗議活動が広がっています。メディアでよく報道されているデモ行進をはじめとして、警察組織の改革を要求する嘆願書への署名運動、黒人支援活動への寄付、人種問題に関するセミナーの開催など、活動内容はさまざまです。

 

そんな中、学術業界(アカデミア)やSTEM(科学Science、技術Technology、工学Engineering、数学Mathematicsの総称)業界の有志によって立ち上がった活動が、#ShutDownAcademia、#ShutDownSTEMです。

https://www.shutdownstem.com/

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これは、アカデミアやSTEMに関わる人たちに、普段の仕事を丸一日休んで、黒人に対する人種差別をなくすために自分に何ができるかを計画しようという呼びかけです。特徴的なのは、実行可能な計画を立てて行動に移すことを要求している点。単に人種問題についての知識を深めるだけでは、問題は解決できないと強調しています。

 

この活動はまさに今日(2020年6月10日)行われており、わたしが勤務する研究所でも活動に参加している人が多数いるようです。わたしが所属する研究室でもZoomで情報交換・議論しました。また、ウェブ上にも関連する情報がたくさん出てきました。以下、目にとまったものをいくつか紹介します。どれも英語ですが、翻訳ツールを使うとさっと読むことができると思います。

 

科学誌サイエンスは、議論の助けになるようにと、関連する記事を10本以上無料公開しました。自動化による人種バイアス、パンデミック被害の人種格差、アカデミアにおけるキャリア形成、奴隷の歴史など、広範囲なトピックをカバーしており、黒人に対する人種差別が構造的(システミックsystemic)であることがよくわかります。

https://twitter.com/ScienceMagazine/status/1270430534120935425

 

科学誌ネイチャーもこの活動に参加しています。通常の業務を停止し、アカデミアとSTEM業界の黒人の方たちをサポートする方法について議論するとのこと。どのくらい具体的な計画を立てることができるのか、気になります。

https://www.nature.com/articles/d41586-020-01723-9

 

アカデミアにおける黒人の方々の経験談。人種差別が日常生活のいたるところに潜むことを実感させられます。

https://twitter.com/hashtag/BlackintheIvory?src=hashtag_click

 

丸一日記事を読んでいたせいで目がシパシパしますが、米国アカデミアにとって人種問題が長年の未解決課題であることが見えてきました。何が問題となっているかについては、またの機会にまとめてみたいと思います。

 

次回は、#ShutDownAcademia、#ShutDownSTEMが提言する内容について、より具体的にお伝えします。